残置物の処理等に関するモデル契約条項は賃貸市場における高齢者の受け入れに対する不安感の解消につながるか?

リスク

家主「話題になってるけど、残置物の処理等に関するモデル契約条項ってどういうことなの?教えてくれる?」

こんな質問に答えます。

今回のテーマ

制度の背景、概要が理解でき、今後の賃貸経営に生かせます

モデル契約条項を策定した背景

賃借人の死亡後、賃借権と居室内に残された家財(以下「残置物」という。)の所有権は、その相続人に承継(相続)されるため、相続人の有無や所在が分からない場合、賃貸借契約の解除や残置物の処理が困難になることがあり、特に単身高齢者に対して賃貸人が建物を貸すことを躊躇する問題が生じています。

 このような賃貸人の不安感を払拭し、単身高齢者の居住の安定確保を図る観点から、国土交通省及び法務省において、死後事務委任契約を締結する方法について検討を行い、単身高齢者の死亡後に、契約関係及び残置物を円滑に処理できるように「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(ひな形)を策定しました。また、今後、セミナーの開催等を通じて、関係者に対して周知を図ってまいります。

国土交通省 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000145.html

上記にあるように、モデル契約条項を策定をした理由は高齢入居者が死亡した際に残った動産などの処分についてあらかじめ取り決めをしておき、長期間にわたり次の入居募集が行えないといった家主のリスクを減らし、高齢者の住宅確保を後押しする狙いがあります。

モデル契約条項の概要

【想定される利用場面】
単身高齢者(60歳以上の者)の入居時(賃貸借契約締結時)

(1) 賃貸借契約の解除
  • 受任者に対し、賃借人の死亡後に賃貸借契約を解除する代理権を授与。

賃貸借契約の解除事務の委任契約を賃借人と生前行った受任者が、契約解除の代理権を得て、契約の存続中に委任者である賃借人が死亡した場合、賃貸人との合意の上、賃貸借契約を解除できる内容です。

賃借人が亡くなった場合、相続人へその地位は承継されます。ですが、相続人と連絡が取れず賃料の滞納が発生するなど貸主にとって心配があります。貸主からの契約解除の通知を受け取れる意味は大きいです。

(2) 残置物の処理
  • 受任者に対し、賃借人の死亡後に残置物の廃棄や指定先へ送付する事務を委任。
  • 受任者は、賃借人の死亡から一定期間が経過し、かつ、賃貸借契約が終了した後に、「廃棄しない残置物」以外のものを廃棄。ただし、換価することができる残置物については、換価するように努める必要があります。

残置物関係の事務委託契約について、賃借人が自分の死後、所有動産の破棄や送付についての事務を受任者に委託することによって賃貸人入居募集などが早期に行えるようになります。そのため、賃借人は生前に決まった送り先への送付を求める動産のリストを用意して受任者が対応できるようにしておきます。

残置物の処理等に関するモデル契約条項
 

単身高齢者の受け入れは進むのか?賃貸経営に与える影響

日本の持ち家率は約60%で、地域格差は大きいものの全国でみると今後もこの水準で推移しそうです。下の図は総務省統計局のデータです。

統計局ホームページ https://www.stat.go.jp/data/nihon/21.html

恋した状況の中、問題になるのは日本人口の高齢化です。高齢化率(赤い折れ線グラフ)を見ると令和2年度で65歳以上人口割合が28.9%あります。

モデル契約条項が想定している利用場面は単身高齢者(60歳以上の者)の入居時(賃貸借契約締結時)ですので、対象となる人数は多くなるはずです。

賃貸経営に与える影響

今後、賃貸業を行う上で今まで想定していた借主像は変化していくと思います。地域性、個別性はありますのですべての居住用物件に当てはまるわけではありませんが、そうした情勢の変化は頭に入れておく必要があります。

つまり、想定していた借主は働き盛りの年代や学生などであった物件に、高齢者の申し込みが入ってくるということです。

過去に、60歳以上の単身の方が部屋を探し、気に入った物件に申し込みをしてもオーナー審査でキャンセルとなったことがあります。このように今まで通りの感覚でいると空室に悩む時代がすぐそこまで来ているようです。

今後、様々な事案や意見が国土交通省に集約され、より実際の現場に即したものに変わっていくことでしょう。管理会社や家主は、リスクを理解して適切な対応を行うことで収益を最大化させることができるようになると思います。

また、2021年5月20日に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」を発表しています。モデル契約条項やガイドラインの整備を進めることで賃貸住宅の促進を図っていることがうかがえます。

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