
退去予定の人「普通に住んでいたつもりなんだけど、室内に気になるところがある。退去する時に請求されるのだろか?どんな状態が借主の負担になるの?」
こんな質問に答えます。
☑今回のテーマ
賃貸物件の借主の負担となるクロスの損傷、損耗が理解できます
賃貸物件に住んでいると、ライフスタイルの変化や自宅の購入、転勤などの理由で引っ越しをするタイミングが来ると、不動産管理会社の立ち合いのもと、原状回復の費用負担について話し合いがもたれると思います。
場合によってはお部屋の修繕費の請求が来る場合があります。
その場合に、請求が妥当かどうか判断がつけば、トラブルの防止につながると思います。今回は実務を行う上で一番頻度が高いクロスについて解説していきます。
国土交通省のガイドライン
国民生活センターには、退去時費用負担について毎年13,000件以上の相談が寄せられています。請求された費用について借主が納得できておらず、トラブルに発展している件数と考えられます。
こうした状況を受けて国土交通省は退去時の費用負担についてガイドラインを平成10年3月に取りまとめました。
法律ではなく、ガイドラインなので強制力はありませんが、過去の判例をもとに作成されているため、裁判に発展した場合もガイドラインの内容になると推測されます。
ガイドラインのポイント
〇原状回復の定義・・・
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することです。」
〇賃貸借経過年数を考慮・・・
「クロスにカビなどがあったとして、張替が必要な場合であっても、経年変化や通常損耗が含まれており、賃借人はその分を賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全てを負担することとなると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があるため、賃借人の負担については、クロスの経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる考え方を採用しています。」
退去時に請求される項目、費用の妥当性とは?
ガイドラインにあるように、賃借人(部屋を借りている人)には善管注意義務(自分の持ち物と同じように使用する義務)があります。
請求が発生する場合、この善管注意義務に違反した損傷・棄損があったと考えられます。また賃貸借契約を結んだ時に、退去時の清算について規定されている場合もあります。
善管注意義務違反の場合はどんなものがある?
- 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)
- 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)
- クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
- タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)
- 壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
- 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
- 落書き等の故意による毀損
国土交通省のガイドラインでは、「壁、床等」の賃借人(部屋を借りている人)の負担となる項目を上記のように定めています。
退去するお部屋のクロスが、上記のような状態だった場合、請求が発生する可能性が高いです。
耐用年数の考慮とは?
ガイドラインではクロスの耐用年数をこのように定めています。
クロスの場合・・6 年で残存価値 1 円となるような負担割合を算定する
家賃として貸主に毎月家賃を支払っているので、たとえ善管注意義務違反があったとしても全額負担は賃借人(部屋を借りている人)に不利だという考えからで、入居年数に応じてクロスの価値も自然劣化・経年劣化するはずで、それを考慮しましょうということです。
ただし、注意点もあります。クロスの単価は1,000円/㎡だとしても、内訳は材料費、施工費(下地処理、古い壁紙処分費含む)に分けて考えます。
クロスの材料費が350円/平米
施工費が650円/平米
ですので、「落書き」や手入れを怠ったことによる「カビ」「油汚れ」「引っ越し作業でついたキズ」などは、
650円/平米+クロスの材料費(耐用年数の負担割合)/平米=請求額となります。
1,000円/平米に対して6年住んだから1円になると考えそうですが、そうではない点に注意が必要です。
実際に請求が来たら?
クロスに関して、国土交通省のガイドラインと照らし合わせてみて、請求項目と請求額が妥当かどうか判断ができます。
また、火災保険にご加入されている方は一度その保険会社にご相談ください。火災保険の特約に借家人賠償や個人賠償がついている場合、保険が適用される場合があります。



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